日本病院会正副会長|2022年頭所感

一般社団法人日本病院会

「変化の時代の変わらぬもの」

 コロナ禍を経て、どの場面においても大きな変化が迫られているとの認識は誰もがお持ちであろう。そして、2040年を見据えた将来の医療提供体制の変革が、新型コロナによって前倒しされ早まったとも言われ、全くの同感ではある。
 しかし本当に「変化の時代」なのか、とカナダの経営学大学院のミンツバーグ教授は指摘する。曰く、『CEOのスピーチ原稿を作るためにコンピューターに向かうと、次の瞬間には、私たちは大きな変化の時代を生きています。という定型文が表示されても不思議ではない。過去半世紀この類いのフレーズはスピーチの決まり文句になっている。
 しかし私達は本当に大きな変化の時代を生きているのか。あなたの身の回りを見て、何が根本から変わったか挙げてみてほしい。食べ物や家具、交友関係、熱中するものなどは変わっただろうか。私が言いたいのは、人は変化するものばかりに目を向けがちだが、ほとんどのものは変わっていないということだ。「変わらないもの」をマネジメントせずに「変わるもの」ばかりマネジメントしていたら大混乱に陥る』、と。
 では、医療における変わらないものとはなんであろう。それは、目の前にいる患者さんに対して、いかに最善の治療を施すのか、悪い状態から脱却してもらい、心身ともに良好となって欲しいとの、医の心であろう。これまで先人が積み上げてきたわが国の良好な医療提供もこの精神を基本とするからである。
 さて、コロナ禍における支援金補助金で一息ついたのは、医療界は勿論、他の業種においても差異はあれ同様であろう。一方で新内閣の新たな経済的支援策へ、バラマキとの批判がある。
 一面の真理とは考えるが、医療提供体制は一度崩れてしまえば、再興には多大な努力と資金や時間が必要である。財政の論理はそれとして、やはり我々は医の原点を変わらぬものと基本にしっかりと据え、矜持をもって今後に対応してゆくべきであろう。

万代恭嗣
一般社団法人 日本病院会 副会長 万代恭嗣


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